収穫作業も残りわずか。
ぶどうの品種によって収穫の時期が異なりますが、収穫が遅い品種でも11月前までには、ほぼ全ての収穫を終えます。
これまで、収穫作業を「ぶどう研究所」や「ぶどう農家さん」の所でさせていただきましたが、場所や生産者によってぶどうの味は甘かったり、すっぱかったりと様々でした。
では一体どのような味わいのぶどうが、ワインづくりにとって好ましいのか。また、そのぶどうを収穫する為にはどのように栽培すれば良いのか。
そんな感じで今回は、上質なぶどうを収穫できるようになるには、どうしたら良いのかを初心者なりに観察し、気が付いた事をおさらいしていきます。
ワイン用のぶどうはどんな味なのか?
ワイン用に作られるぶどうを食べたことはありますか?
おそらくほとんどの人は食べたことが無いと答えるでしょう。スーパーマーケットや産直などで買うことができれば良いのですが、そういった品種は販売されている現場を見たことがありません。
私は今年、人生で初めてワイン用のぶどうを収穫の時に食べました。
ワイン用のぶどうは一つ一つの粒が小粒で、食べてみると皮や種の主張がかなり強く、種の周りまで甘いです。実は、この「皮」と「種」が重要なポイントの一つです。
ワインの醸造はまず、ぶどうをつぶして皮や種ごと発酵させます。この発酵させる工程でぶどうの皮や種は、ワインの味わいに大きな影響を与える、非常に重要な存在なのでです。
良いワインになるぶどうとは?
ワイン造りはぶどう造り。良いワインは、良いぶどうから。ワインの味の8割は、ぶどうによって決まる。
などといった格言?のようなものを諸説耳にする通り、ワインは醸造技術も大切ですが、それ以上にまずはぶどうづくりが重要と言われています。
そこで、私が様々な環境で育ったワイン用ぶどうを、約半年間この目で観察し、食して感じた事をまとめていきます。
つまみ食いがとまらない
収穫に行った際には、毎回実ったぶどうを味見させてもらいました。
様々な状況で育ったぶどうは個性豊かで、たとえそれが同じ品種でも、味はまるで別物。甘かったり、すっぱかったりと様々ですが、これはこれでワインになった時の個性かなと思っていました。
でも、美味しいぶどうはつまみ食いが止まらないんですよね。
おいしいぶどうとは、バランスが取れていてコクがあり、上質なぶどうという事でほぼ間違いないでしょう。
実際、私たちが食べてつまみ食いが止まらなかった土地からは、上等なワインが誕生すると聞いています。
ちなみに、一般的なぶどうは酸味が多く、あじが単調で自分から進んでたくさん食べようとは思わなかったです。
手入れが行きとどいている
ぶどうの栽培方法は基本的にどの農家さんもいっしょです。「果実をみのらせて収穫する」といった基本は、指導してくれたり、研修会などで学びます。
たいせつなのはその先。果実をどれだけ良いものにするかです。もちろんですが、より良いぶどうづくりの指導・研修は欠かさずおこないます。
がしかし、その作業はひじょうに手間がかかるため、手がまわらなかったワイン畑があってもおかしくはありません。さらには高齢化や、後継者不足というもんだいもかさなり、生産量はおちていく一方です。
そんな中でもしっかりと手入れをしているワイン畑は、格段に味がよいです。ワイン畑の土壌による違いもたしかにあるとは思います。でもそれ以上に「人」がする作業が重要だとわたしは感じます。
知識と経験
暑い年もあれば、雨がおおかった年。毎年ぶどうづくりはつづいていきますが、その年にはその年の気候があります。同じ気候なんてありえません。
ぶどうに限った話ではありませんが、生産者はその年の気候にあわせて作物の作り方をかえています。
寒かったら苗をうえる時期を遅らせてみたり、暑かったから収穫時期をはやめたりといったかんじに。
ワインはビンテージによって値段がちがうとおり、味もちがいます。ぶどうのできが良かった年のワインは高く、イマイチだった年は低いです。
「今年は雨が多かったからぶどうのできがイマイチだけどしょうがない。」なんてかんがえではいけません。
知識と経験がおおい生産者は、雨が多い年には多い年なりの育て方で、ぶどうの良し悪しの差を少なくするどりょくをしています。
チャレンジ
農家でもサラリーマンでも向上心をもってしごとに取り組まなければ、いい結果はでませんよね。
どうなればもっと良くなるのかを考え、自らどんどんチャレンジしていく人材・環境を会社は求めています。
ぶどう栽培において、何もかんがえることなく毎年同じような栽培をつづけていた場合と、品質向上にむけてチャレンジをくりかえしていった場合とではどちらがよいか。
わたしならば後者を選びます。たとえそれが間違ったやり方だったとしても、それは失敗ではなく経験としてこれから永遠に使われていくことになるでしょう。
農業を始めるならサラリーマン時代以上にビジネススキルを

「PDCA」という言葉をしっていますか?これはあまりにも有名なビジネススキルの一つですが、わたしのようにサラリーマンから農業をはじめようとしている人であれば、ビジネススキルとしてこのほかにも様々な学びがあるハズです。
このようなビジネススキルは、独立するいまこそ最大限に発揮するべきです。
「ぶどう栽培にはいままでのビジネススキルなんて無縁。」いいえそんなことありませんよ!むしろサラリーマンだった経験をしっかりと生かすべきです。
農業は肉体労働と思われがちですが、むしろわたしは知的労働だと思います。頭をつかい賢く栽培していかなければ、いい品質のぶどうどころか、農家としての収入の確保さえむずかしいでしょう。
サラリーマン時代の経験をいかし、効率的に努力することが、我々のような新規就農者にとっていいワインぶどうの栽培方法なのではないでしょうか。